江口さんの講演会に参加して

投稿日時 2008-11-22 | カテゴリ: 研修部

佐賀県にありますNPO法人それいゆは、平成13年に佐賀県自閉症協会が母体となって発足しました。地域で行政・学校・医師会の各機関と連携し、ここ数年で目覚ましい地域支援を全国に先駆け先進的な取り組みをされてきました。現在、それいゆ相談センター(教育相談・プリスクール・フリースクール・学童レスパイト)、それいゆ成人支援センター(生活介護と就労移行支援の多機能型事業所・就労支援・ジョブコーチ・余暇支援・ケアホーム)、自閉症支援専門家支援センター(自閉症に関する啓発事業・コンサルテーション・セミナーの開催・自閉症支援専門家養成・海外講師招聘事業など)の3つが大きな柱です。日々自閉症の人たちの支援を行い、それいゆは発展を遂げておられます。                     
                       
(広報誌15号掲載文より一部抜粋) 

 

10月18日(土)、佐賀のNPO法人それいゆ理事長・江口寧子さんの、講演を聴講しました。会場は、北海道教育大学附属特別支援学校の体育館でした。冒頭のご挨拶から、笑顔を絶やすことなくユーモアをもって話される江口さんは、一目で安心できる頼れる偉大なママでした。NPO法人それいゆ理事長という肩書きの前に、まず江口さんは4人のお子さんを育てておられる現役のお母様で、温かさと力強い魅力がおありの方です。

 最初に、7年前に放送された地元テレビ局の番組を拝見しました。江口さんご一家の様子がかなり詳細に取材されていて、お子さんが一歩一歩自立に向けて歩く姿が描かれていました。江口さんは「それいゆの取材をしてもらっているつもりが、ほとんど我が家の取材になってしまった」と笑っていらっしゃいました。番組の後、江口さんの講演が始まりました。親なら誰でも考えないではいられない、「自分がいなくなったらこの子はどうなるのだろう」という不安。不安を抱えつつも、毎日の生活や育児に追われ、公に向かって意見したり訴えて何かを変えようなんて思いもつかない…そういう方は多いのではないでしょうか。

 江口さんはお子さんの診断を受けて佐賀県自閉症協会に入会後、翌年には事務局長に就任されました。協会では、ノースカロライナ州からの留学を終えられた服巻智子先生から自閉症について学び、実践を続けて行かれました。それから江口さんをはじめとする協会の母達が行ったのは、父親達を巻き込むことでした。横浜へ旅行に行かないかと誘い、何も知らないお父さん達が送り込まれた先は、横浜やまびこの里への視察でした。みっちり研修の日々。思わず笑ってしまいましたが、育児は母親頼みが多いお父さん達にとって、とても貴重な体験だったのではないでしょうか。次に、子ども達の卒業後の拠り所である、作業所を作ろうと奔走しました。地域の理解を得られる場所探しに、なんと2年を要したそうです。理解を得られるまで、佐賀県自閉症協会の親たちは諦めることなく、一つ一つ困難を乗り越えて行かれました。平成13年にNPO法人それいゆの設立、その後は行政やマスコミを巻き込み、さらに医師会に働きかけを行い、地域支援の実現を図られました。現在はフリースクールを、あえて県の施設内に開設し、お子さん達も学ぶ場所を得られることと庁舎内の働く人たちを見せること、庁舎内の方にも自閉症の子ども達の実態をみていただくためにだそうです。これ以上効果的な方法もないのではないでしょうか。

 現在の佐賀県では、早期発見・早期療育事業に基づき、1歳半健診や3歳半健診時のスクリーニングが強化され、気になったお子さんの子育て相談会や、親子療育教室があります。丁寧なカウンセリングの中で、診断への導きがあるそうです。診断は不安と緊張で辛いですが、この時期に親に寄り添う支援があることで、親たちは診断前には、前向きな覚悟と将来への見通しを学び、着実に進んで行くことができるそうです。もちろん沢山の支援者や保護者、様々な方が関わっていると思いますが、江口さんをはじめとする佐賀県自閉症協会の親たちの不断の行動と決断があったからこそ、NPO法人それいゆはここまで大きく、全国に名を馳せる組織になっていったのだと思いました。自閉症協会は、子ども達の代弁者として社会や行政へ働きかけていく存在。プロの支援者を育てていく存在。江口さんは一貫してその姿勢で在り続けておられ、素晴らしい行動の方であると同時に、懐の大きさと謙虚さを持ち合わせたお母様でした。チャーミングなご発言もあり、その都度会場を沸かせていましたが、ここに辿り付くまでの道が決して平坦ではなかったろう事は想像に難くありません。

 江口さんは一人の母親として、自分のお子さんを通し、自閉症の子どもの子育てと兄弟児の子育てについても、子どもの視点や配慮について述べられました。育児は同じ。そもそもどんな子も親の思い通りになどならないのに、親はつい過剰な願いを我が子にかけ、かえって追い詰めてしまったりすると。子供自身が安定し、ありのままの自分を好きでいられる事が大切と話されていました。同時に、「我が子の事しか考えない親の子は、決して良くならない」と、服巻先生と同じ言葉を話されていました。障がいのある子を持つという事は、親のひいき目や欲を捨て、子ども自身の幸福の原点に忠実に立ち返る機会なのかもしれません。江口さんのお話と笑顔にとても励まされました。2時間はあっという間でしたが、心の温まる、素晴らしいお話を聞く事ができました。江口さん、本当にありがとうございました。

                                           藤田 




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