佐賀県にありますNPO法人それいゆは、平成13年に佐賀県自閉症協会が母体となって発足しました。地域で行政・学校・医師会の各機関と連携し、ここ数年で目覚ましい地域支援を全国に先駆け先進的な取り組みをされてきました。現在、それいゆ相談センター(教育相談・プリスクール・フリースクール・学童レスパイト)、それいゆ成人支援センター(生活介護と就労移行支援の多機能型事業所・就労支援・ジョブコーチ・余暇支援・ケアホーム)、自閉症支援専門家支援センター(自閉症に関する啓発事業・コンサルテーション・セミナーの開催・自閉症支援専門家養成・海外講師招聘事業など)の3つが大きな柱です。日々自閉症の人たちの支援を行い、それいゆは発展を遂げておられます。
(広報誌15号掲載文より一部抜粋)
10月18日(土)、佐賀のNPO法人それいゆ理事長・江口寧子さんの、講演を聴講しました。会場は、北海道教育大学附属特別支援学校の体育館でした。冒頭のご挨拶から、笑顔を絶やすことなくユーモアをもって話される江口さんは、一目で安心できる頼れる偉大なママでした。NPO法人それいゆ理事長という肩書きの前に、まず江口さんは4人のお子さんを育てておられる現役のお母様で、温かさと力強い魅力がおありの方です。
最初に、7年前に放送された地元テレビ局の番組を拝見しました。江口さんご一家の様子がかなり詳細に取材されていて、お子さんが一歩一歩自立に向けて歩く姿が描かれていました。江口さんは「それいゆの取材をしてもらっているつもりが、ほとんど我が家の取材になってしまった」と笑っていらっしゃいました。番組の後、江口さんの講演が始まりました。親なら誰でも考えないではいられない、「自分がいなくなったらこの子はどうなるのだろう」という不安。不安を抱えつつも、毎日の生活や育児に追われ、公に向かって意見したり訴えて何かを変えようなんて思いもつかない…そういう方は多いのではないでしょうか。
江口さんはお子さんの診断を受けて佐賀県自閉症協会に入会後、翌年には事務局長に就任されました。協会では、ノースカロライナ州からの留学を終えられた服巻智子先生から自閉症について学び、実践を続けて行かれました。それから江口さんをはじめとする協会の母達が行ったのは、父親達を巻き込むことでした。横浜へ旅行に行かないかと誘い、何も知らないお父さん達が送り込まれた先は、横浜やまびこの里への視察でした。みっちり研修の日々。思わず笑ってしまいましたが、育児は母親頼みが多いお父さん達にとって、とても貴重な体験だったのではないでしょうか。次に、子ども達の卒業後の拠り所である、作業所を作ろうと奔走しました。地域の理解を得られる場所探しに、なんと2年を要したそうです。理解を得られるまで、佐賀県自閉症協会の親たちは諦めることなく、一つ一つ困難を乗り越えて行かれました。平成13年にNPO法人それいゆの設立、その後は行政やマスコミを巻き込み、さらに医師会に働きかけを行い、地域支援の実現を図られました。現在はフリースクールを、あえて県の施設内に開設し、お子さん達も学ぶ場所を得られることと庁舎内の働く人たちを見せること、庁舎内の方にも自閉症の子ども達の実態をみていただくためにだそうです。これ以上効果的な方法もないのではないでしょうか。
現在の佐賀県では、早期発見・早期療育事業に基づき、1歳半健診や3歳半健診時のスクリーニングが強化され、気になったお子さんの子育て相談会や、親子療育教室があります。丁寧なカウンセリングの中で、診断への導きがあるそうです。診断は不安と緊張で辛いですが、この時期に親に寄り添う支援があることで、親たちは診断前には、前向きな覚悟と将来への見通しを学び、着実に進んで行くことができるそうです。もちろん沢山の支援者や保護者、様々な方が関わっていると思いますが、江口さんをはじめとする佐賀県自閉症協会の親たちの不断の行動と決断があったからこそ、NPO法人それいゆはここまで大きく、全国に名を馳せる組織になっていったのだと思いました。自閉症協会は、子ども達の代弁者として社会や行政へ働きかけていく存在。プロの支援者を育てていく存在。江口さんは一貫してその姿勢で在り続けておられ、素晴らしい行動の方であると同時に、懐の大きさと謙虚さを持ち合わせたお母様でした。チャーミングなご発言もあり、その都度会場を沸かせていましたが、ここに辿り付くまでの道が決して平坦ではなかったろう事は想像に難くありません。
江口さんは一人の母親として、自分のお子さんを通し、自閉症の子どもの子育てと兄弟児の子育てについても、子どもの視点や配慮について述べられました。育児は同じ。そもそもどんな子も親の思い通りになどならないのに、親はつい過剰な願いを我が子にかけ、かえって追い詰めてしまったりすると。子供自身が安定し、ありのままの自分を好きでいられる事が大切と話されていました。同時に、「我が子の事しか考えない親の子は、決して良くならない」と、服巻先生と同じ言葉を話されていました。障がいのある子を持つという事は、親のひいき目や欲を捨て、子ども自身の幸福の原点に忠実に立ち返る機会なのかもしれません。江口さんのお話と笑顔にとても励まされました。2時間はあっという間でしたが、心の温まる、素晴らしいお話を聞く事ができました。江口さん、本当にありがとうございました。
藤田
12月11日(月)、教育大学附属養護学校内「きりのめの家」で、行われた懇談会に参加させていただきました。テーマは『自閉症のある方の就業・地域支援について』という内容で、講師は社会福祉法人「電機神奈川福祉センター」理事長の土師修司氏でした。
途中にはビデオを見せて頂き、その中では特例子会社で働く障害者の様子が映し出され、とても印象に残りました。特例子会社は8月現在で全国に198ヶ所あるそうですが、残念ながら大企業の多い都市圏に集中しております。しかし、特例子会社でなくとも、良く言われることですが、「企業が求める能力や人材がマッチングすれば、重度の障害者でも働ける」と、土師氏は強調されておられました。そのために保護者を含めた周囲の支援者が心がけておくべき事として①興味のあるところを伸ばして自信につなげる。②指示通りの仕事ができる(ただし、指示を出す側も本人が理解できるような指示の出し方を工夫する)。③わからない時や手伝って欲しい時に訴えることができる。④時間や約束を守る。⑤体力作り。など、小さな時から準備できることをポイントとして、あげておられました。
また、雇用側の意識として大事な点は『障害を理解して“労働力”として雇用するためには、本人にとって働きやすく給料に見合う成果が出る環境を整える』とのお話をされておられました。もう一点は、社会に出ると様々な誘惑があること、そのために必要な『生活支援』の重要性を訴えておられました。
障害者自立支援法では『働く』ということが大きなキーワードになっております。今後、多くの企業で障害者の雇用が進んでいくこと、そして多くの障害者が『明るく元気に働く大人』になれることを願っております。
道下 康子
7月5日(木)北斗市農業振興センターにて平成19年度 第1回学習会が開かれました。
演題は「ソーシャルストーリーズ・コミック会話~実践に学ぶ」、講師は服巻智子先生でした。前年度、本会の学習会で「お母さんが書くソーシャルストーリー」を勉強させていただいていて、今年度、初めて学習する方に配慮して、簡単な復習を組み入れながらの内容でした。
自閉症児者にとって、構造化とともに、ソーシャルストーリーズやコミック会話は、生活する為に、大きな助けになる事は、過去の服巻先生のお話から、よく理解はしていても、実践するにはとても難しく、まだまだ勉強が必要だと思っていました。
ソーシャルストーリーズTM10.0のガイドラインを要点だけ説明していただきましたが、本が出版されているので、本の中のチェックリストに基づいて作成すると、安心です。ソーシャルストーリーズを作成する法則を勉強して、強く感じたのは、社会性の理解が弱い自閉症児者に要点をまとめて、受け入れやすい内容で伝えると言う事は、伝える側にも自覚が必要なんだと、気付かされました。普段、息子に対して、いかに余計な情報を伝え、必要な情報を伝えていないか・・・。
「ポジティブな用語を使わないといけないけど、親はなかなか使えないのよね」と、言われて、「ホント、そうだわ」と感じてしまい、ますますソーシャルストーリーズの難しさを実感しました。でも、使えるようになって、息子も私も少しでも楽になりたいと思います。
その点、コミック会話は使いやすいです。視覚的情報を受け入れやすい自閉症児者には、紙芝居や漫画と同様に、気軽に使えます。
ただ、ソーシャルストーリーズやコミック会話は、服巻先生のおっしゃる通り、視覚的に受け入れやすいからこそ、受け入れた内容に本人が苦しまないよう、配慮が必要な事も忘れないようにしたいです。
毎回、服巻先生のお話は、先生が関わってきた自閉症児者の、幸せな体験談と、悲惨な現状を例に挙げて教えて下さり、演題とは別の貴重なお話しが聞けて、いろんな意味で満足して帰宅しました。今後の学習会も楽しみにしております。
八日市
3月2日(金)北斗市農業振興センターにて、第3回学習会が開催されました。この度の学習会は道南分会では、初の試みである「実践発表会」でした。モニター会員が専門部の先生や学校の先生との連携・協力のもと、それぞれのテーマに沿って1年間家庭で行った支援方法と、その支援によって子供がどのように取り組めたかを発表されました。そして、講師である「それいゆ自閉症支援専門家養成センター」センター長の服巻智子先生にアドバイスを頂く、といったものでした。
モニター会員の方々が、どのような経緯でテーマ(どんなことに取り組むか)を決め、更にどのような方法で支援していくべきかを話し合い、問題点はその都度対処しながら子供に合った支援を続けてきました。それぞれの家庭で取り組んでいる様子を収めたビデオも交えながら、実に具体的に発表されました。更に会場には実際に使用された支援グッズ(絵カードや写真等)も展示されました。そして発表ごとに服巻先生が取り組んで良かった点や改善点をアドバイスして下さいました。三人の方が発表されましたが、どれも大変参考になりました。
日頃失敗や訂正・子供に拒否されることに抵抗を感じて、新しいことにチャレンジできずにいる私にとっては、子供に合った支援方法であれば問題は乗り越えられるという勇気をもらいました。また認知度は違っても、視覚支援や構造化が自閉症児者にとって最も有効だということも、モニター会員のお子さんの家庭での様子を見たことで改めて感じました。
服巻先生が色々とお話下さったアドバイスの中で、「先(発展)を望むよりも、やっていることをやめる勇気も必要」という言葉が強く心に残りました。私もそうですが、「コレができたら次はアレもできるようになってほしい」と思いがちです。子供本人は1つできるようになって、現状でハッピーな状態でいるにもかかわらず、親としてはやはり1つでも多くの事を一人でできるようになってほしいあまりに、支援を発展させて継続してしまいがちです。でもそれをやめることも必要だということを、服巻先生は教えて下さいました。
当事者親子・学校・専門家がひとつになって、その子にできそうな日常課題を見つけ、一緒に方法を探り、問題を乗り越えながら支援していくといった一連の輪は、どこにでもあって当然のような気はします。しかし現実はそうではなく、むしろこの様な輪が理想的であるとさえ思えます。
今回のような取り組みが続くこと、そして障がい児者を取り囲む輪が学校・専門機関だけでなく地域にまで広がっていくことを願って、まずは我が子の日常生活を見直して、何に取り組めるかを考えてみようと思った学習会でした。
江繋
去る11月9日(木)、北斗市農業振興センターにて「第3回親のための学習会」が開催されました。
講師は侑愛会 星が丘寮 園長 寺尾孝士氏で、「自閉症の人たちへの支援~星が丘寮の実践と成人期から期待すること~」というテーマでお話いただきました。星が丘寮での現在の支援(寮、作業班、職場実習、余暇支援)の取り組みについては、ビデオも見せていただき、実際の活動を知ることができました。
星が丘寮の利用者の中には一般企業に実習に入っている方もおり、適切な支援をしていくことによって就労が成しえるということ、また、職場の方々に障がいを理解し協力して頂かなければ成り立たないということもわかりました。成人期を迎えるにあたって、幼児期・児童期から身につけておいてほしいことについても触れられており、現在小学1年生の子供を持つ親として、子供のためにやらなければならないことを、再確認いたしました。
やはり、子供のころからの積み重ねが就労にもつながり、また成人期を豊かに過ごすためには必要なことだと思います。
当日は48名の参加者があり、みな熱心に寺尾先生の話に耳を傾けていました。
鎌田